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兄弟げんか

 

 

女「たっだいまー!おやつおやつ~今日のおやつはなんだろな!」

 

男「遅かったじゃないか。僕がここにきて10分も経ってのご到着だなんて、随分とのんびりしているものだね。」

 

女「あ、兄貴!?なんで上級生のお前が私より先に家に帰っている!授業はどうした!」

 

男「衰えたな妹。3年前はそんな凝り固まった考えをする人間ではなかったのに。今日、数学の先生が休みだということを知らないとでもいうつもりかい?」

 

女「な、ま、まさか・・・」

 

男 「そうさぁ!今日の数学は休講!お休みだよ妹!同じ時間に終わって尚帰宅にこれだけの時間の差が生まれているというのはつまり!お前が油断してのんびり歩いてきたからだろう!」

 

女 「く、だからといって何が悪い!たった10分の違いだろ!」

 

男 「そうか、確かに、たった10分だ。だが、されど10分もあればいろいろなことができるんだぜ?これはなんだと思う?ほら、よくみてみるんだ。これは、一体、なんだと思う?」

 

女 「んん、そ、それはまさか・・・いや、そんなはずは、そんな馬鹿げたことがあるわけ・・・」

 

男 「馬鹿げたこと?馬鹿げたことだって?君は一体何年間僕と一緒にいるんだい?僕がやりそうなことくらい想像できるんじゃあないか?先に帰ってきてプリンを2人分食べてしまうなんてことくらい、容易に想像できるものだとばかり思って

いたよ!」

 

女 「き、貴様あああああ!」

 

男 「どうだい!この空っぽの2つのカップを見た感想は!悲しいねぇ!憎いだろう!この僕が!だけどね!僕だって君の事が憎いんだ妹よ!僕のいない間に食べたメロン、美味しかったかい?美味しかっただろう?あの苦しみに比べたらこの程度甘んじて受け入れてもらわないとねえ!」

 

女 「あ、あれは仕方がなかった!私の意志じゃなかったんだ!」

 

男 「そうだね、君は悪くない。だがね、だからといって僕の恨みや憎しみが消えるわけじゃないだろう!僕がどれだけあのメロンを楽しみにしていたのか、君には到底理解できまい。」

 

女 「だからといってそれが私の分のプリンを食べる理由にはならない!」

 

男 「なるさ。そして今度は君が僕を恨み、報復する。憎しみの連鎖だ。連鎖は誰かが止めなければならないだろう。しかしそれは僕じゃない。わかるだろう?僕はそういう人間だからね。」

 

女 「く、くっく、あはははは!!」

 

男 「なにがおかしい?」

 

女 「まだわかっていないようだね兄貴。兄貴はとうの昔から私に敗北しているという事実を。」

 

男 「どういう意味かね?僕が、君に負けている?笑える冗談だ。」

 

女 「教えてあげるよ兄貴。この私が!今日!お母さんから買い物を頼まれているということだ!」

 

男 「それはなによりじゃないか。せいぜい励むといいよ。」

 

女 「まだわかっていないようだな。果たして、明日の兄貴のおやつがあるのかどうか見ものだな!」

 

男 「君は母親の買い物リストどおりに買わないつもりかな?そんなことが許されるとでも本気で思っているのか?」

 

女 「焦っているんじゃないのか兄貴?そんなもの、一言いえば済む話だよ。たった一言、兄貴は今後、おやつはいらないと言っていた、とだけね。」

 

男 「・・・君はこれ以上僕を怒らせるつもりなのかい?これ以上、僕からおやつを奪うというのかい?許せないね。いけないことだ。お仕置きをしないといけない。」

 

女 「そんなことを言えるのも今のうちだ!ここにお母さんから預かったメモがある!きっと兄貴へのお仕置きの言葉が書いてあるに違いない!」

 

男 「そんなものが一体何になるというのかな?憎しみは消えない!そして報復の連鎖も止まることはないのだ!」

 

女 「これを聞いて後悔しろ!自分の愚かな行動を悔め!えーと・・・」

 

男 「どうした、さっそと読むがいい。どうせ無駄なのだから。」

 

女 「・・・『仲良くしないと、二人ともおやつ抜き』」

 

男 「・・・」

 

女 「・・・えっと」

 

男 「では妹よ、買い物にいくとしようか。何、お互い痛み分けということにしようう。それがいい。そうしよう。」

 

女 「そ、そうだね!いこうか兄貴!仲良いもんね!買い物にGO!」

 

男 「明日のおやつはメロンがいい。」

 

女 「何言ってんのプリン!」

 

男「メロンだ」

 

女 「プリンー!!」

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