看病
男「うあーずびずび」
女「あんたが風邪ひくなんてね。ヤリイカでも降るんじゃないの?」
男「それをいうなら槍だろ・・・ヤリイカ降ったら一面びしゃびしゃのめとめとだよ・・・」
女「そっかー、まあ珍しいものって意味ではおんなじじゃない?」
男「たとえ話にも定番ってものがあるだろずびびー」
女「鼻水かんだら?」
男「うああずびー」
女「はいはい。」
男「そういえばさ、何人目だっけ?」
女「んー?なにがー?」
男「人数。俺でさ。」
女「ああ・・・もう数えてないや。」
男「そっかー・・・20人くらい?」
女「まあそんなもん。」
男「やっぱ覚えてんじゃんか。」
女「大体よ大体。それにもう数えてないのは本当。」
男「つらいだろ?」
女「もう慣れたよ。」
男「ほんとか?」
女「ほんと。」
男「嘘だろ」
女「ほんとだってば。」
男「だって、そんな顔してる。」
女「顔は生まれつきだよ。辛そうな顔もね。」
男「お前がそんなんじゃなければ、すぐに薬を飲むのにな。」
女「別に気にしなくていいんだよ。飲まないと治らないんだから。」
男「記憶が無くなる薬なんて好んで飲むと思うか?」
女「治す方法はそれしか無いんだよ。それに放っといたら死んじゃうよ。」
男「風邪で死ぬなんて考えられん」
女「じゃあ、死にたいの?」
男「いや、死にたくはないけどさ・・・でも記憶が無くなるんだから、俺にとっては死ぬことと同じだろ」
女「私にとっては違う。あんたに死なれたら困るのよ。もうこの世界にはあんたと私しかいないんだから。ほんと、なんで風邪なんてひいちゃうかな。また記憶のないあんたに自己紹介するのは気がひけるんだけど。」
男「不老になったと思ったら、まさかの風邪が弱点。しかも俺だけ。そんな都合が悪いことになるもんかね。」
女「そうなっちゃったんだからしょうがないでしょ。私だって不老不死にしたかったわよ。何度も説明した・・・あんたには2回くらい。」
男「やっぱり、辛いんだろ。」
女「何、辛いって言えばいいの?そんなに聴きたい?」
男「・・・いや、いいや。」
女「あんたがどう思おうと、薬を飲むしかないのよ。だって、そうしないと私は一人になってしまうもの。」
男「・・・わかった、飲むよ。」
女「うん、そうして。」
男「ん・・・ごくり」
女「あーあ、またやり直しか・・・次は何年もつかな。こいつが目覚めるまで掃除でもして・・・げほっ!え、あれ、血?うそ、で、・・・」
ーーーーーー
男「ん、んー、ん?ここはどこ?って、俺は誰?ん、頭いたい、何も思い出せない・・・誰かいないのか?って、おい!大丈夫か!血が出てる!おい、誰か!誰かいないのか!誰かー!!」
おわり