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​地獄の沙汰も金次第

女「あーあ、私死んじゃったのかあ。まさか頭に隕石が突き刺さるなんて相当運がいいよね。いや悪いのか。それにしてもここどこだろ?おーい、誰かいないのー?」

 

男「おい。」

 

女「うわ!びっくりした!おっちゃん誰?死んじゃったの?」

 

男「勝手に他人様を殺すんじゃない。死んだのはお前だけだ。」

 

女「そっかー。じゃあおっちゃん誰?ここどこ?」

 

男「俺は『けんえおう』という。いわゆる鬼ってやつだ。とてつもなく面倒だが、死んだ人間の罪を測って三途の川へ放り出す役割だ。」

 

女「あ!きいたことある!さんずのかわ!あれでしょ、死んだ人が渡るって川!へー、本当にあるんだー。」

 

男「残念ながら本当だ。お前が生前どれだけ悪事を働いたかによって、安全に渡れるかそうでないかを決める。」

 

女「ほうほうなるほど。それで、私の罪はどんくらいなの?」

 

男「それをこれから測る。面倒だが、それが閻魔から与えられた役割である以上、俺に逆らうことなどできはしないのでな。仕方なく、仕方なく測るとしよう。」

 

女「ふーん、どうやってはかるの?」

 

男「脱げ。」

 

女「・・・え?」

 

男「ほらさっさと脱げ。全部だ全部。」

 

女「ぬ、脱ぐの?何を?」

 

男「服に決まってるだろう。」

 

女「ええーー!?なんで!?私16よ16!うら若き高校生!高校1年生!なんであんたみたいなおっさんに裸見せなきゃいけないわけ!?」

 

男「服を脱がせる鬼がちょうど留守でなあ、自分でちゃっちゃと脱いでくれや。」

 

女「無理やり脱がせるつもりだったの!?いやよ!いや!」

 

男「どうしてもか。」

 

女「当然!」

 

男「そうか。じゃあ金を払え。」

 

女「かね?・・・ってお金のこと?」

 

男「それ以外に何がある。脱ぎたくなければ金を払え。」

 

女「なんで払わないといけないのよ!泥棒!強盗!痴漢!」

 

男「何を言おうと関係ない。ここには人間界の法律などというものは存在しない。本来は服をそこの木にかけることで罪の大きさをはかるのだが、まあ金を払えば見逃してやると言っているんだ。とても親切だろう。やさしいなあ俺は。わかったらさっさと金を払え。時は金なり、なんていう言葉がお前の世界にはあったんじゃないのか。」

 

女「服を木に?そんなことしないとわかんないの?無能ね!鬼のくせに!」

 

男「そうだ。俺は服を木にかけて、罪の大きさをはかることだけが役割だ。それ以外のことは何も言われていない。逆に言えばそれさえやれば何をしても自由だ。無理やり服を破り捨て、地獄に放り投げることも自由なんだが。」

 

女「う、お、おどそうってわけ?私はそんなに軽い女じゃ・・・」

 

男「脅してなんかないとも。俺は面倒くさいことは嫌いでな。さっさと服を脱いぐか金を払うか決めてくれないか。金だよ金、金さえあれば決まりやルールなんてどうとでもなる。」

 

女「う・・・い、いくら必要なのよ。たしかお財布持ってたはず・・・」

 

男「何安いものさ。たったの六文。六文銭だ。」

 

女「え?な、なに?もん?円じゃなくて?」

 

男「そうだ六文だ。それ以上は歓迎だがそれ未満はダメだ。一銭たりとも値引くわけにはいかん。俺は金遣いが荒いんだ。こうでもしないとすぐに金が無くなってしまう。」

 

女「三途の川でもお金使うの?」

 

男「当然だ。三途の川だろうが黄泉の国だろうが天国だろうが地獄だろうが金はつかうぜえ。地獄の沙汰も金次第ってことだ。」

 

女「ぬう、死んでも資本主義なのね。これじゃあんまり死ぬ前と変わらないじゃん。」

 

男「何を馬鹿なことを言っている。金があれば自由だが金が無ければ自由は無い。地獄という名前がついてるのは伊達じゃあないぞ。」

 

女「って!なんか地獄にいくことになってる!」

 

男「行きたくなかったら金を払えといっているんだ。もしくはさっさと脱げ。」

 

女「う・・・ろ、六百円じゃだめ?」

 

男「なんだあそれは。俺は六文銭を出せと言っているんだ。そんな偽物でごまかせるわけがないだろう。」

 

女「だ、だって!そんなお金しらないもん!もんなんてしらないもん!」

 

男「じゃあさっさと脱げ。」

 

女「ぬ、脱げば天国にいけるの?」

 

男「さあなあ、お前の積み重ねてきた罪の大きさ次第だな。」

 

女「うう、脱がされた上に地獄とか最悪じゃん・・・でもろくもんせんなんてものないし・・・」

 

男「ほらさっさと金だ。金を払え。もしくは脱げ。」

 

女「うっさいわね!わかったわよ脱ぐわよ!こっち見ないで!」

 

男「見るに決まってるだろう。逃げられでもしたら面倒だ。」

 

女「く、法律ってのが大事なものだって今わかった・・・」

 

男「はやくしてくれお前ひとりに時間をかけたくないんでなあ」

 

女「ちょっとまってて!く・・・恨むわよ隕石・・・まずはスカートを、ってん?なんかポケットにはいって・・・」

 

男「どうしたー、俺がひんむいてやろうかあ?」

 

女「こ、これ・・・なんかポケットに入ってたんだけど」

 

男「んん?なんだ持ってるじゃないか。さっさとよこせ。」

 

女「え?これがろくもんせん?」

 

男「そうだ。よかったなあ持たせてくれたみたいで。」

 

女「もたせてくれた?誰が?」

 

男「さあなあ。親か親戚か友人か。とにかくお前は何事もなく彼岸へ渡れるということだ。さっさと橋をわたっていけ。落ちるなよ。落ちたらそのまま地獄へ流されるぜえ。」

 

女「え?ああうん。わかったー。そっか、おかーさんかな?持たせてくれたのか。」

 

男「じゃあな。次に会うときは、転生後にまた死んじまった時だ。」

 

女「てんせい?・・・まあいいや。じゃーねー鬼のおっさん!あんまり若い女の子脱がせちゃだめだよ!」

 

男「金さえもらえればな。あばよ。」

 

女「鬼ってあんな感じなんだなー。さーて!さっさとてんせい?とやらしていきますかー!れっつごー!っとあっぶな!手すりもないのこの橋!霧かかってるし!」

 

男「・・・さーて、次も若い女の子が来ることを強く望むとしよう。できれば金を持ってこないでほしいところだ。」

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