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魔王コンビニへ行く

女「あー退屈。楽したいって気持ちはあるけど、まったくお客さんがこないってのも暇すぎる。・・・っと、言ってるそばからお客さん来た。いらっしゃいませー。」


男「ここがコンビニエンスストーアという場所かぁ!なかなかに快適ではないか。余の魔王城の一部とするにふさわしい!」


女「・・・なんかヤバそうな人がきた。」


男「下々の愚民の話では、世の中のあらゆるものがそろっているそうではないか。この小さい小屋にそれほどのものが置かれているとは到底思えんが、異次元の扉でもあるのやもしれん。」


女「いや、無いし。」


男「ん?おい女。いや、男か?」


女「女よ!胸無くてごめんなさいね!」


男「まあそんなことはどうでもよい。」


女「どうでもよくない!何?お客なの!?冷やかしなの!?それともドッキリ!!?」


男「無礼な口ぶりだが、いちいち下々の愚民の言うことなどに腹を立てる余では無いのでな。よかったな愚民。余が寛大であることに感謝せよ。」


女「しーつーもーんーにー答えろ!」


男「王たる余が愚民の問いに答える義理などないが―――まあ良いだろう。無知な愚民に教養を授けるのもまた王の職務でもあろう。心して聴くがよい。余は魔王サタン!1000万の魔族を率いる、魔族の王よ!」


女「えっと、今日はハロウィンじゃないので、多分コスプレ会場を間違えてると思いますよ?


男「はろうぃんとやらもコスプレとやらも知らぬが、余は間違えてなどおらぬ。ここはコンビニエンスストーアなのだろう?」


女「まあ、そうだけど・・・」


男「では案内しろ女。余が説明してやったのだ。この狭い倉庫を案内する程度のこと、やってしかるべきであろう。」


女「うーん、面倒だけど暇だしなあ・・・そういう罰ゲームなのかもしれないし、ちょっと面白そうだから付き合ってやるか。それじゃ、そこの棚から。」


男「うむ、余への忠義、大変結構である。これはなんという魔道書なのだ?」


女「それはジャンプ。ワンピースとか、ヒロアカとか、知らない?」


男「ワンピースなどという呪文は余でおいてすら聴いたことが無い!なるほど、禁呪であるか。この神聖な白縄で封印しておるのだな。魔族の余では触れることすらできぬということか。」


女「ただの紐だけど・・・まあいいや。次はこっちの棚。」


男「なんと、ここは冷却されているではないか!冷却魔道具など、余ですらほとんど持って
おらぬと言うのに、このような場所に使用されているとは・・・何を冷やしておるの
だ!?」


女「そこはドリンク。コーラとかお茶とか。そっちはアルコール類。」


男「ポーションの類(たぐい)か・・・?これだけの数と種類を同時に管理するとは・・・
一体どれだけの魔力が消耗されているのか、到底想像できぬ!」


女「ぽーしょん?コーヒーにいれるやつ?」
男「これはなにかね。」
女「えっと、それはサラダチキン。ハーブがいっぱい入ってるやつだねそれ。」
男「魔鳥の肉か・・・?殺すとすぐに腐ってしまう魔鳥をここまでバラバラに、しかもその
まま食えるように管理するなど魔族においてすら至難の業だというのに・・・!なんという
場所なのだコンビニエンスストーア!このような場所がまさか人間の世界にあろうとは!」
女「ど、どう?」
男「うむ、余は驚愕しておる。では先ほどの魔導書をいただいていくぞ。」
女「まど・・ああ、ジャンプ。230円です。」
男「・・・にひゃくさんじえ?」
女「お金。」
男「そのようなものはもっておらぬ。」
女「え、お金持ってないの?」
男「そのおかねとやらが無ければ魔導書は手に入らないのか?」
女「当たり前でしょ。」
男「ぬう、これではダメか。暗黒龍の爪。これで一刺しすればどんな生き物でも数秒で死に
絶えるぞ。」
女「うわこわ!いらないよそんなもの!」
男「なんだと・・・?魔界では相当な価値のあるものだが、これ以上の価値があるというの
か・・・。仕方がない、今回はあきらめるとしよう。では何かいただいていけるものはある
か?」
女「タダはちょっと・・・んー、あ、これならいいよ。ポイントカード。」
男「ぽいんとかど?それは一体なんなのだ?」
女「買い物すると、ポイントがたまって、オリジナルグッズがもらえるよ。」
男「なんだと・・・!?独自開発した魔道具を何の代価もなく渡すだと!馬鹿なありえ
ん!!」
女「今度はお金もってきてくださいね。」
男「そのおかねとやらはわからぬが、いいだろう。余の部下を甘く見るでないぞ。魔界中を
探させ、おかねとやらを必ず収集してみせよう!」
女「またのご来店をお待ちしておりまーす。」
男「うむ、余への忠誠および魔道具管理者としての責務、大儀であった。また会おうぞ女
よ。ふははははは!」
女「・・・・変わった人がいるんだなあ。っと、またお客さんだ。いらっしゃいま・・」
男2「ここがコンビーニという場所かぁ!地底人の王、このセミーザ様がわざわざ来てやっ
たぞ!ジャハハハハ!!」
女「・・・次はセミかあ。はいはい、どのようなご用件でしょーかー!」

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