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「アニマルモード」

 

男「念願の完全没入型VRゴーグルを手に入れたぞ!」

 


女「ずっと欲しがってたもんね〜これでトモユキも電脳世界の住人だね〜」

 


男「そんな大袈裟なもんじゃないだろー、単なるゲームじゃんか。このゲーム大好きな俺がいままで持っていなかった方が不思議だぜ」

 


女「確かに昔っからゲーム大好きだもんねトモユキは。私はキョーミないけど。」

 


男「へっへ〜そんなこといったって、やらせてやんねーぜ。俺がようやく小遣いためて買ったんだからな!しばらくは一人で没頭するぜ〜」

 


女「キョーミないってば。大体、ちょっと危なそうじゃん。脳みそに刺激を与えて、ゲームの世界で動いているように錯覚させるなんてさ。やってる間、リアルで何がおきてるかわからないんでしょ?セクハラし放題じゃん。」

 


男「ちっちっち。そのへんのリアルな設定はちゃんとできるのだよ。出始めの時は没入レベルが高すぎてそういう事件もあったけど、今はちゃんとセーフティがついてるのさ!」

 


女「そーなんだー。ってか、やったこともないのにやけに詳しいねトモユキ。」

 


男「ま、情報通な俺からしたらこの程度のこと朝飯前ってね〜」

 


女「買えないからいろんな情報を先に調べることしかできなかった、と。うーん、わかりやすい。」

 


男「べ、べつにいいだろ!いちいち翻訳するなよアキ!」

 


女「あはは。そゆとこ昔っから変わらないね〜。」

 


男「へいへい。いやー、しかし早くやりたいぜ。こんなに家が遠いと思ったことはないな〜」

 


女「ところで、何のゲーム買ったの?まさかハードだけじゃないんでしょ?」

 


男「あたり前だ!そんな凡ミスはしないぜ。えーと、『アニマルモード』ってゲーム。地球のいろんな動物になって世界中を飛び回れるんだぜ。VRゲームとしては数少ない人間じゃないものになれるゲームなんだよ。」

 


女「アニマルモード?なんかどっかで聞いた事あるなあ、どこだっけ?」

 


男「ん?ゲームに全く興味がないアキがゲームの情報を知ってるなんて、こりゃ槍でも振るかな?」

 


女「ばっか、そういうんじゃなくって。なんか、あんまり喜ばしく無い系のニュースで・・・なんだっけなー」

 


男「ニュース?このゲーム、話題作ではあるけどそんなニュースに出るほどの有名ゲームじゃないハズだけど。テレビCMとかもなかったけどなあ。」

 


女「んー、あ、思い出した。といっても、都市伝説みたいたネットニュースだった。」

 


男「へー、どんなニュース?」

 


女「なんか、アニマルモードにハマっちゃった人はリアルでも動物になっちゃって一生を過ごす、とかそういう荒唐無稽な話。」

 


男「なにそれ。そんなんあるわけないじゃんか。」

 


女「だよね。私もそう思う。ま、犬でも猿でも鳥でも好きなもんになってきなさいな。トモイヌちゃん。」

 


男「桃太郎じゃねえか!」

 


女「あはは!それじゃ、感想聞かせてね〜」

 


男「おう、そんじゃまた!」

 


ーーーーー

 


男「さーて、スイッチを入れて、横になるっと。お、おー始まった!!すげえー!これがVRの・・・せか・・・」

 

 

ーーーーー

 


女「それで、どうだったトモユキ?」

 


男「おうー、それがすっごい楽しかったんだよ!チーターになって大草原を走ってみたり、イルカになって大海原を泳いでみたり!ネズミになって家の隙間を走り抜けてみたりな!いやー、動物の視点ってのは斬新だわー」

 


女「ほんと、いろんな動物になれるんだね〜」

 


男「最初はまだそんな多くの種類から選べないんだけどな。ゲームを進めていくと、数百種類の動物になれるらしいんだよ!」

 


女「そーなんだー。ま、せっかく買ったんだしいろいろ楽しみなよ。」

 


男「当然!実績解除までもうすぐだから、もう今日は帰るわ!」

 


女「うんー。そんじゃまたね。」

 


男「おう、また!」

 

 


ーーーーーー

 


男「よっし実績解除!次に使える動物はーっと・・・ん、豚?おかしいな、豚はもっと最初の方に出てたハズだけど。なんか違う種類なのかな。三元豚とか?まあせっかく出たし、使ってみるかな〜。」

 


機械「新しい動物が選択されました。どうぞ広い世界をお楽しみください。」

 


男「楽しむ楽しむ〜。・・・っと、これが豚の視点か。視点的には犬とそんなに変わらないな。開始地点は、ここはどこだろ?柵?って、他の豚もいる。とりあえず移動をー・・・って、狭い!ほとんど動けないじゃん!」

 


女2「あらあら、元気な豚さんね。この子にしましょ。さあ行きましょうね〜。」

 


男「え?人間?この世界に人間なんて居ないハズだけど。って、ちょちょちょ、引っ張るなって。どこに連れてくんだよ!・・・トラック?檻?って出発した。一体どこにいくんだっての。」

 


女2(電話)「そーなのー!とっても元気で美味しそうな豚さんゲット♪うん、そうそう。あいてる?すぐ使えそう?オーケー!運転手さん、いつもの屠殺場(とさつじょう)にお願いね!」

 


男「ゲット?おいしそう?とさつじょう?って、え、これ、もしかして食用豚!!??ちょ冗談じゃねえぞ!!このままじゃ殺されるってことじゃんか!!!は、はやくログアウト・・・あ、ログアウトは移動中はできないんだっけ・・・到着するまで待つしかないのか・・・」

 


ーーーーー

 


女2「到着したわよー豚さん♪さあこっちにおいで〜」

 


男「よ、よし止まったぞ。ログアウト・・・って、あれ?ろ、ログアウトできない?え?システムエラー?この動物はストーリークリアまで変更できない?ど、どういうこと?し、しかもペインレベルが最大!!??これじゃ痛みが軽減できないじゃないか!!!」

 


女2「それじゃ、お願いしますねー♪」

 


男「ううわ、ちょ、ま、やめーーーーーー」

 

 


ーーーーーーー

 


女「んー、ネットサーフィンは楽しいな〜っと。ん?アニマルモードで突然死?・・・また都市伝説系のネタニュースか〜。トモユキは今頃何になってるんだろ?明日聞いてみよっと。」

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