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悪の組織のお料理教室

女1「はーいみなさんこんにちは!私は料理研究家の佐藤塩子です!今日はなんと、悪の組織さんにお邪魔していますー!今日はよろしくお願いします!」

男1「本日はこのような場所においでくださいまして、まことに感謝の極みでございます。神から与えられた試練だと思って事に当たらせていだたきたく存じます。」

 

女1「も、ものすごく丁寧にありがとうございます。えっと、お名前が・・・「アンドレメク・サンドロフュート・パケラコケトロスモルド」さん、でよろしいですか?」

 

男1「ええ、一言一句間違いございません。ですがこの場において、ワタクシとアナタは弟子と師匠の関係。ワタクシの事はアンドレとお呼びくださいませ。アナタの事は師と呼ばせていただきますので。」

 

女1「師?あの、そんな大それたもんじゃー――」

 

男1「いいえ!仮にも長い年月を持って身に着けた他言無用一子相伝の技術をワタクシめにご教授していただけるというのです!せめて!せめて師と呼ばせていただけなければワタクシの神への信仰を裏切るというもの!」

 

女1「あ、わ、わかりました・・・。えと、アンドレさん?よろしくお願いします?」

 

男1「はい、よろしくお願い致します。」

(少し間)

 

女1「で、では!本日の料理は、フワフワとろとろのスクランブルエッグです!とっても簡単でおいしいですよ!早速やっていきましょう。まず、卵を割ってボールにいれます。アンドレさん、やってみましょう。」

 

男1「・・・ワタクシが、でございましょうか?」

 

女1「はい!卵を割り入れてください!」

 

男1「ワタクシめに、そのような大義をお任せになると、そうおっしゃっているのですか?」

 

女1「た、たいぎ?卵を割って、ボールに入れるだけなので・・・」

 

男1「お任せになられると・・・このワタクシめに、そのような、そのような大役をお任せになられると!あああああ神よ!ワタクシをお試しなさっておられるのですか!試練を!お与えくださっておられるのですか!この矮小で愚鈍で凡愚なこの身の器に到底収まるハズのない大

義!大役!有り得てもよいのでしょうか!このような奇跡が願望が!すでにワタクシの手の中に試練として収まっているなどと!神よ!ああ神よ神よ神よおおおお!!!」

 

男2「アンドレメクよ、やるのです。あなたは試練と共に、あるのです。」

 

男1「か、神の声が、聴こえる・・・」

 

女1「あの・・・大丈夫、でしょうか?」

 

男1「ええお任せください。いいえ、是非ワタクシ目にやらせてくださいませ。乗り越えてみせましょう・・・否、乗り越えられねば何が信仰でしょうか!師を前にして失敗など有り得てはならぬのです!・・・師よ、ご覧ください。ワタクシの神への愛情を!では、参ります。」

 

女1「ど、どうぞ。」

 

SE(卵を割る音)

女1「おお、アンドレさん上手ですよ!」

 

男1「・・・今なんと?」

 

女1「え?とっても上手ですよ!」

 

男1「褒めて、おられるのですか?」

 

女1「はい!その調子でいきましょう!では次は―――」

 

男1「おおおおおおおおおおおお!!!!なんというもったいないお言葉!なんという!なんということでしょうか!愚昧で矮小なこの身にそのような言葉をかけてくださるなぞ、身に余る光栄でございます!!ワタクシは、ワタクシはついに師の課題を乗り越え、神の試練を果たしたのです!ああ師よ!神よ!かのような試練をお与えくださり感謝の極みでございます!いいえ!言葉の上での感謝などもはや不要です!ワタクシはこれより神に祈りをささげてまいります。師よ、5時間ほどお待ちくださいませ。すぐに終わらせてまいりますゆえ。」

 

女1「え?ご、五時間!?ああちょっと!・・・いっちゃった。あ、で、では!佐藤塩子のお料理教室!また来週~!・・・仕事、選ぼう。」

 

 

~おわり~

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