死後の現実
女の子「おじいちゃん!死んじゃやだ!」
男1「おじいちゃんは、十分生きたよ。あの世から子供と孫を見守ることにするさ。」
女の子「だめだよ!もっと一緒にいようよー!」
男1「はは、お迎えが来た、ようだ。いい、人生だった・・・ガク」
女の子「おじいちゃーーん!!」
――――――――――――――
男1「ん、んん、儂は死んで・・・ここがあの世かのぅ?なんだかずいぶん廃れているが・・・・なんじゃあれは、瓦礫の山?空もくすんでおるし・・・」
女1「あ、起きた?お疲れ様。」
男1「ぬあっ、な、なんじゃあんたは?」
女1「何って、人間よ。見てわかるでしょ?」
男1「儂は一体・・・?ここはどこなんじゃ?」
女1「あー、そっか。忘れちゃってるもんね。おしえたげる。」
男1「儂はさっき死んで、あの世に来たのではないのかね?」
女1「んーん、逆。あなたがさっきまでいたのが地獄で、ここが現世。現世で罪を重ねすぎると地獄に転生させられるの。そして地獄で罪を償いきると、こちらに戻ってくる。この世界において寿命とかそういうものは無いわ。私はもう500年くらい生きてるもの。」
男1「・・・」
女1「ちょっと、きいてる?もしもーし」
男1「あ、ああ、きいとる。きいとるが、あまりにもその、突飛というか、現実離れしたことばかりでな・・・・」
女1「だーかーらー、ここが現実なんだってば。まあいいや。そのへんは慣れるし。とにかく、これを持って。ハイ。」
男1「ん、なんじゃこれ、鉄砲?本物なのかねこれは。これで何を・・・」
女1「もちろん、戦争よ。今この世界は戦争の真っ最中。たくさん殺してね。」
男1「殺すって・・・さっきこの世界では死ぬことはないと」
女1「さっき言ったのは寿命の話。でも、殺されるのは別。」
男1「殺されると、どうなるんじゃ?地獄にいくのか?」
女1「地獄にいくのは罪を重ねた人だけ。もちろん、殺すことも罪よ。だからあなたは以前随分と活躍したんじゃない?」
男1「それじゃあ、どうなる?」
女1「消えるの。存在が。なにもかも。この世にも地獄にも存在しなくなる。転生なんてものもない。きれいさっぱりね。」
男1「そんな・・・それでは人がいなくなってしまうではないか。」
女1「あー、最終的にはそうなるかもね。でも随分先だと思うわよ?まだ2兆人くらいいるし。」
男1「に、2兆!?そんなにおるのか!!?」
女1「ええ、だからはい。さっさと戦いましょ。私は戦うの苦手なんだもの。まあ、だからこそ500年も意識を保っているのだけど。」
男1「・・・・」
女1「ん?どーしたの?ほら立って立って」
男1「あ、ああ」
女1「さーて、ちゃちゃっと前線にいきましょう!」
男1「一体、どうなっておるんじゃ・・・」
―――――――――――――――
男1「・・・・地獄じゃ」
女1「ん?なんかいった?」
男1「何って・・・これが戦争・・・?ただの突撃じゃあないか。撃ちながら走って、撃たれて消えているだけじゃないか。」
女1「ああ、あいつらのことは気にしなくていいわ。生きるのに飽きたやつらですもの。」
男1「生きるのに、飽きた?」
女1「そーよ。数百年、もしくは数千年かしら?単純にやることが無くなるのよ。ゆっくり時間を過ごそうとか、そういうことすらやり飽きるの。その中でのこの戦争。消えたがりがでるのも仕方ないわ。私は消えたくなんてないけど。」
男1「そんな、ことがあっていいのか・・・?」
女1「でも、そんなやつらは少数派よ?大体が何人消せるかスコアを競ったり、新しい武器を開発しようなんて輩もいるわ。」
男1「命の価値が、ここではそんなに低いのか・・・」
女1「価値なんてそもそもないのよ。生きていてもいづれ地獄行き、殺されれば消える。これの一体どこに価値があるの?」
男1「そんな、生きることの定義が、あやふやに・・・・」
女1「さーて、前回のあなたの活躍を期待してるわよ。」
男1「・・・こんな地獄にいるくらいなら、儂は消える。」
女1「だーかーらー、地獄はここじゃない・・・って自分に銃向けてなにしてんの!?」
男1「すまないなお嬢さん。儂は消えることにするよ。地獄の方がよっぽど幸せだとは、皮肉なものだな。ではさようなら。」
女1「ちょちょちょ、ちょっと―――!!・・・消えちゃった。地獄ってそんなにいいとこなのかなー・・・あ、また戻ってきた人がいる!おーい、君!お帰りなさい!!」