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地球最後の日

男1「なあ、アユミ。」

 

女1「なあに、タカシ。」

 

男1「夏休みの宿題、やった?」

 

女1「やってない。」

 

男1「もう8月31日だぜ?」

 

女1「そーだね。タカシはやったの?」

 

男1「―――やってねえな。」

 

女1「ダメじゃん。」

 

男1「まー、やらねえよな。だって、明日だもんよ。」

 

女1「・・・そうだね。明日だね。」

 

男1「今でも信じられねえよ。明日――――地球がぶっ壊れるなんてさ。」

 

女1「・・・うん。私も。」

 

男1「そりゃあ、宿題なんて言ってる場合じゃないわな、ははは。」

 

女1「・・・うん。」

 

男1「びっくりだよな。月くらいでかい巨大隕石が降ってきて地球に直撃、その衝撃で地表は全壊。生き残ることは不可能。人類は数少ない人間を宇宙船に載せて果ての無い宇宙の旅へ出発だとさ。」

 

女1「そう、だね。」

 

男1「意味わかんねえよな。脱出できる人は1000人ちょっと。それでもありったけの技術と時間を費やした結果だってな。しかも8割方はお偉いさん。」

 

女1「・・・タカシ。私は―――」

 

男1「・・・よかったじゃん、選ばれてさ。」

 

女1「良くないよ!タカシが一緒じゃないなんて、嫌だよ!」

 

男1「俺だって一緒に居たいよ!生きたいよ!でも駄目なんだ!!」

 

女1「じゃあ私も残る!!タカシと一緒に地球に残る!!」

 

男1「そんなのダメに決まってるだろ!!わざわざ命を捨てるなんてアホか!」

 

女1「アホでも馬鹿でもいい!」

 

男1「駄目だ!」

 

女1「駄目じゃない!」

 

男1「駄目だって!」

 

女1「駄目じゃないもん!」

 

はぁ、はぁ、はぁ(2人)

 

男1「俺は・・・アユミに生きていて欲しいんだ・・・生きられるんだから、生きなきゃダメだろ・・・残される人に失礼じゃないか・・・」

 

女1「タカシも家族も友達もいないんだよ・・?それに地球から出たからって安全てわけでもない。」

 

男1「そりゃ、そうだけど、さ。」

 

女1「どうすればいいのかな・・・?どうすればみんな幸せになれるのかな・・・」

 

男1「わかんねえ・・・。わかんねえな。あと1日で地球上から誰一人いなくなるなんて、想像もできねえよ。」

 

女1「・・・私ね、思うことがあるの。もう、人間は滅びる時期なのかなって。」

 

男1「いきなり何言ってんだ、そんなわけないだろ。」

 

女1「だって、いろんな生き物を殺してきたし、環境だって壊し続けてる。きっと神様が怒ってるのかなって思う。」

 

男1「・・・身勝手な神様だな。」

 

女1「神様じゃなければ悪魔かも。」

 

男1「そうだな、その方がしっくりくる。」

 

女1「ねえ、これだけ聴かせて?」

 

男1「なんだよ。」

 

女1「タカシは、地球と私、どっちが好き?」

 

男1「前言撤回、悪魔はアユミだったか。」

 

女1「冗談じゃなくって!本気なの!」

 

男1「そんな悪魔的な質問をこんな時にするなんて人間じゃないな。正体を表せー!」

 

女1「ちょ、あはは!くすぐったい!!あははは!!」

 

男1「おらおらー」

 

女1「あはは!あはははは!!!・・・はは。」

 

男1「はは、はあ。・・・そうだな、地球とアユミ、か。難しい所だけど、アユミの方が大事、かな。アユミとなら、地球じゃなくても生き

ていける気がする。」

 

女1「―――そっか。」

 

男1「なんだよ、うれしくないのか?」

 

女1「ううん。嬉しい。とっても。」

 

男1「・・・泣いてんのか?」

 

女1「うん。ううん。泣いてない。泣いてないよ。」

 

男1「・・・嘘つけ。」

 

女1「ふふ。じゃあ、そろそろ行こうかな。」

 

男1「ああ、宇宙船の出発は今夜だもんな。早めに行った方が―――」

 

女1「ううん、宇宙船にはいかない。」

 

男1「え?」

 

女1「タカシ、実は、ワタシは悪魔なの。隕石はワタシの所為じゃないけどね。」

 

男1「え、は?はは、何言ってるんだろ、こんな時に冗談きつい――」

 

女1「冗談じゃないんだ。ほら、見て。」

 

男1「・・・羽と、尻尾?」

 

女1「行くのは、冥界。タカシと一緒に冥界に逃げるの。私と一緒ならどこでも生きていけるでしょ?」

 

男1「ちょちょちょ、ちょっと待て!!意味がわからん、えっと、何?アユミが悪魔で、冥界に逃げる?その後は?」

 

女1「その後って、それで終わり。地球は無くなって、脱出した人々もきっとどこかで死ぬわ。コールドスリープしたところで人が生きていける惑星なんてそうそう無いもの。大丈夫、冥界って意外と快適だから!ほら、死んだ友達とかにも会えるかもよ?」

 

男1「・・・マジ?」

 

女1「マジだよ、タカシ。ワタシと一緒に生きていくには、それしかない。」

 

男1「・・・そっか。地球を捨てて、家族を捨てて、皆を捨てて、俺だけ助かる、と。はは、最悪だな俺。」

 

女1「・・・そうだね。でも、その最悪の半分はワタシだよ。2人で最悪を分け合って生きて行こう。」

 

男1「OK,わかった。それじゃ行こうか。冥界とやらに。」

 

女1「うん、一緒に行こう。」

 

男1「・・・あ、ちょっとまって。」

 

女1「なに?」

 

男1「お菓子買ってくる。」

 

女1「ぷっ、あはははは!!うん、そうだね!2人で準備しようか!冥界に引っ越しだよ!」

 

男1「おうー!楽しみだな冥界!」

 

女1「・・・タカシ、泣いてる?」

 

男1「泣いて、ねえよ!!泣いてねえから、早く行こうぜ!!」

 

女1「・・・うん、行こう。あと、ごめん。」

 

男1「―――そういえば地球最後の日でもコンビニって営業してんのかな。」

 

女1「開いてなかったらドア壊して入っちゃおう。ワタシ悪魔だし。」

 

男1「悪魔こええ。」

 

女1「あはは!それじゃれっつごー!!」

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