殺人鬼と殺し屋
女「会いたかったわ。ずーっとね。」
男「俺もだ、ミセス。自己紹介は必要かな?」
女「いらないわ。これからあなたを殺すのだもの。死ぬ人間の名前を知ったところで、脳みその無駄遣いだと思わない?」
男「くっふっふ、その通りだミセス。その一振りの刀で、俺の短剣を叩き割るのだろう。俺のこの身体を真っ二つに叩き切るのだろう。楽しみで楽しくて仕方がない。
目の前で美しい声を出している美しい肉体をバラバラにして内臓一つ一つをコレクションしてやろう!きっと素晴らしい血と骨と肉の饗宴になるだろう。
さあ、早く戦おう、殺しあおう、斬りあおう、刺しあおう、早く早く早くううううう!!!」
女「そうね、私も楽しみだわ。あなたが血を吹きだして死ぬところがね。」
男「ぬふはははは、やってみろお!!」
(剣戟)
女「どうしたの?その程度?」
男「ぐはははははは!なかなかやるじゃないか!いいぞ、とても楽しい!楽しいぞ!!」
女「いくらあがいてもあなたはここで死ぬのよ、殺人鬼。」
男「俺を殺人鬼と呼ぶか、国一つ分も殺してきた殺し屋が、俺のことを鬼だというのか。では貴様はなんだミセス?鬼か?人か?化け物か?それとも家畜か?」
女「処刑の真っ最中に随分とおしゃべりね、殺人鬼。世の中に未練でもあるのかしら?」
(中断)
男「この世への未練など生まれた時から幽世(かくりよ)へ置いてきた。あるのはただただ殺戮衝動とぶちまけられる臓腑への渇望のみよ。」
女「そう、あなたには、もう何も無いのね。」
男「・・・今宵は良い月だ。死ぬには勿体ない程に。」
女「あら、あなたにも月を楽しむ風情があったのね。」
男「ほざけ。今夜はここまでだミセス。どうせ望まずともまた殺し合う仲だろう。」
女「・・・そうね。」
男「ではこれまでだ。さらばだ儚き殺し屋よ。また会う日まで。」